近年のエグゼクティブポジションの転職キーワードとして「事業承継」があります。
後継者がいないが、事業は存続させたいという要望もあり、CEO・代表取締役社長の求人が多数あります。事業承継に関わるエグゼクティブポジションの採用動向・転職事例について、JAC Recruitment(以下、JAC)のコンサルタントが最新の情報をお伝えします。
事業承継に関わるエグゼクティブポジションの採用ニーズ・転職動向
「黒字経営だが、後継者がいない」――地方を中心に、「後継難」の課題を抱える企業が増えています。
オーナー経営者が高齢となり引退するケースもあれば、まだ若い2代目・3代目社長であっても自身での事業継続に限界を感じているケースもあります。
それでも「廃業」の道を選ばず、経営を引き継げる方を迎えることで事業存続を図る企業が多数。JACには、そのような求人が寄せられています。ここでは、件数が多い順番に、求人のパターンをご紹介しましょう。
買収したPEファンド/事業会社が経営者を採用
M&Aによって企業を買収したPE(プライベート・エクイティ)ファンド/事業会社が経営人材を採用し、次期社長として買収先企業に送り込むケースが多数あります。
PEファンドの場合は、転職エージェントやヘッドハンターが、次期社長にふさわしい方を探し、PEファンドへ提案するケースが多いです。
事業会社の場合は、一般的に、自社の社員を次期社長として買収先企業に送り込みます。しかし、自社に適切な社員がいない場合は、外部から後継者を採用しています。
自社で後継者を採用
M&Aを行わず、「自分の後継者は自分で探す」という意向のオーナー経営者もいらっしゃいます。
この場合、まずは「COO」「取締役・事業責任者」などのポジションで採用し、半年~1年程度様子を見たうえでCEOに就任していただくケースが見られます。
入社時点からCEOを任せる場合、オーナー経営者が勇退して完全に任せるケースもあれば、「会長」「顧問」「アドバイザー」のような形で、しばらくの期間、経営に関与するケースもあります。
一方、「中継ぎ」の役割を求めるケースも見られます。「自身の子息・息女に承継する予定ではあるが、まだ若く経験不足。そこで中継ぎとして社長を務めながら、子息・息女を経営者として育成してほしい」と考え、その役割を担ってくれる方を求めるケースもあります。
なお、「経営の承継」と「資本の承継」を分けて考え、経営だけを任せてオーナー一族が株式を保有し続けるケースがある一方、「承継者が銀行融資を受けて株式を買い取る」「株式を従業員が持ち合う」など、パターンはさまざまです。
採用されている方の年齢層
承継する組織の年齢層によって異なりますが、ある程度、経営経験が豊富であることが求められるため、50代~60代前後の方が採用に至るケースがもっとも多いです。
勤務地の傾向
事業承継求人の約9割は、地方にあります。ここでいう「地方」には、東京都心から2時間以上かかる首都圏近郊エリアも含みます。
そのため、採用された場合、都内にマイホームや家族を残し、単身赴任する方が多いです。月曜日から金曜日まで、会社近くの賃貸住宅・借り上げ社宅から通勤し、週末に自宅に帰る生活スタイルをとられています。
業種や受け入れ体制次第では「リモートワーク可」など、柔軟に対応するケースもありますが、やはり「社長は常駐が望ましい」と考える企業が多いといえます。
年収相場
このポジションで採用されている方の年収は、企業の規模や体力によって大きな差があります。
ボリュームゾーンは年収1,500~2,500万円ですが、PEファンドを介して就任される場合は比較的高めに設定されることが多く、また、企業規模が大きくなると、年収3,000~4,000万円の提示がなされるケースもあります。
一方、企業が直接後継者を採用する場合は、年収1,200~1,500万円前後の求人が多く、企業の経営状況によっては2000万円以上提示されるケースもあります。
転職者側の志向
事業承継に関わるポジションでの転職を選択する方々に目を向けると、「収入」や「肩書」を求めるのではなく、「自身の経験・スキルを生かして社会に貢献したい」「次世代の育成を担いたい」といった志向をお持ちの方が多く見られます。
事業承継に関わるエグゼクティブポジションの採用で求められる人材像
では、どのような経験・スキルが求められるのでしょう。企業によって重視するポイントは異なりますが、大まかな傾向は以下のとおりです。
PEファンドでは「投資先企業での経験」を求める
PEファンドでは、経営経験が豊富な人材が求められています。いわゆる「プロ経営者」と呼ばれる方々です。これまでにPEファンドの投資先企業でのCEOを経験した方であれば、「共通言語で対話ができる」「ファンドが期待していることを理解している」といった点で、期待が寄せられます。
事業会社では、「事業部長クラス」を可とするケースも
事業会社では、「長く務めてほしい」という意向から、数年ごとに企業を渡り歩くタイプの経営者は敬遠する傾向があります。自社と親和性がある業界で、長く経験を積んだ方が求められます。オーナー経営者がリスペクトする企業の出身者も好まれています。
オーナーがしばらくの間会社に残り、「次期経営者を育てる」という意向の場合、経営者としての経験がない「事業部長」クラスの方が採用されるケースもあります。
引き継ぐ企業より「やや大規模から同等規模」の経験が必要
「経営経験がある」といっても、数十名規模の企業の社長を務めた方が、数百名規模の企業の社長を引き継ぐのは現実的ではありません。
任せる企業の規模よりもやや大きな規模の会社、あるいは同等規模の会社での経験が求められます。
新しい環境・文化になじむ柔軟な姿勢が求められる
就任直後から前職のやり方を踏襲しようとする方は、敬遠される傾向が見られます。自身のやり方を断行したとしても、失敗に終わることが少なくありません。
まずは新しい環境・文化を受け入れ、なじもうとする姿勢が求められます。
特に、首都圏から地方企業に転職した場合は、警戒心を持たれるケースもあります。既存の従業員を尊重し、人間関係を築けるようなパーソナリティが重視されます。
事業承継に関わるエグゼクティブポジションの転職成功事例
「次期社長」のポジションで転職に成功された方の事例をご紹介します。
Tさん(60代前半)は大手企業の取締役、およびグループ企業の社長を務めていた方。安定した地位を得ており、継続して勤務する道もありましたが、大規模な組織のルールや「社内政治」に息苦しさも感じていらっしゃいました。「お客様に向き合い、手触り感がある仕事がしたい」と、JACに相談されました。
業種や規模にこだわらず、さまざまな企業のカジュアル面談に臨んだ結果、選んだのは従業員数十名規模の消費財メーカー。オーナーが高齢となり承継時期にさしかかったものの、ご子息・ご息女は異分野の職業に就いているため、経営を任せられる人材を外部に求めたのです。
経営課題としては、「営業体制の再構築」「ブランドの再構築」「Eコマースなど新たなチャネルの開発」などがありました。
数万人規模の大企業から数十名規模の中小企業と、組織サイズには大きな差がありますが、Tさんは前職でライフスタイル分野の子会社を経営していた経験もお持ちです。
ブランディングやチャネル開拓を得意とするため、「自身の経験を生かして会社を成長させられる」と確信。年収はダウンしましたが、やりがいを感じて入社を決意されました。
事業承継に関わるエグゼクティブ転職ならJAC
事業承継に関わるポジションの求人は、コンフィデンシャルな求人も多いだけに、独自で探すことは難しいといえます。一方、JACは全国に拠点を展開しており、地方企業に多い「後継者求人」の情報を多数有しています。
また、PEファンドとの協業も長く続けており、事業承継関連ポジションの転職支援実績も蓄積してきました。
これまでの経験や事例も踏まえ、「就任後に価値を発揮できるか」という観点を大切に、適切な企業・ポジションを選ぶためのサポートをいたします。
まだ転職の意志を固めていない状況であっても、まずはお気軽にご相談ください。
転職するかどうかを判断するための情報をご提供いたします。